黒い大きな犬

そこは、この世界にあるどこかであることは確かだけれど、少なくとも僕には見たことのない景色だった。夜の闇は少しずつ薄くなっていく。僕にはそれが手にとるように判る。大きな樹木が僕等を取り囲む。黒いピカピカの車は、それを縫うようにして走る。陸地に上がってからの速度はますます速さを増していた。人工的に作られたような建物はひとつも見えない。時々、洞窟のようなものや洞穴(モグラが掘ったようなものだ)が姿を現すだけだ。