――龍樹サイド――


「チッ……」


小さく舌打ちをし、ガンッとそばの籠のようなものを蹴り飛ばした。


なにも悠由に……怒っているわけじゃない。

俺に気付いてわざとああしたなんとかという男が一番なわけだが。

そのとき動くことすらできなかった自分も腹立たしい。


そして……悠由にあたった。


また、泣きそうな顔をしていた。

話を聞いてくれと目が訴えていたのに。


餓鬼臭い嫉妬をしてあいつをまた泣かせた。


「ハァ…………チッ…」


壁寄りに、頭を抱えてしゃがみ込んだ。


でももし……あの場にいたら。

俺はきっと、なにもかもを抑えられなかった。

感情のままに悠由を乱暴に扱っただろう。


いっそ今はあの男のことは忘れて、悠由のそばにいてやったほうがいいのか…。

恐らく相当不安定になってるだろうしな…。


悩んだからといって、答えの出るような話じゃない。

俺がいていいのか、いないほうがいいのか。

それは悠由にしかわからないことなわけだし。


「どーすんだよ…俺……」


今更にとてつもなく後悔した。