叫んでしまいたいことは山ほどあった。
だけど、床に落ちたお弁当を一瞥した先輩の表情の硬さに、なにも言えなかった。
「先…輩」
いつかのように、届かないほど小さな声でしか先輩を呼べない。
去っていく後ろ姿のトゲに、心を刺されたみたいだった。
どうして…?
どうしてこんなことになっちゃったの?
きっと…槙野くんは、先輩に気付いて。
それなのにわざと……。
『篠原龍樹がなんだっての?』
…挑発、の……つもりだったんだろうか。
それにしてもひどすぎる。
こんな……。
お弁当を拾い上げ、屋上に出る。
そこで膝を抱えて静かに涙だけを流した。
先輩と付き合うようになって半年ほど…。
こんなの、初めて。
喧嘩だってしたことなかったのに…。
先輩……。

