――龍樹サイド――


「そいじゃ先輩!」


そう言って、悠由は駆けていった。

その後ろ姿を、見えなくなるまで目で追う。


「……ハア…」


俺…惚れすぎだろ…。

自分がこう嫉妬深いとは思わなかった。


悠由が最近さらにモテ始め、男から狙われまくっているのは分かっていた。

でも大抵あいつは、「知らない人にお友達になろうって言われたよ」と報告してくる。


だが今回は違う。

クラスメイトで……隣の席で…。

…つまり、俺より近い。

一日の中ほんの一時間も一緒にいない俺とは違い、学校ではほとんど顔を合わせているんだ。

しかも「彼氏がいようと関係ねー」だと?


「ふん……。ふざけやがって餓鬼が」


この俺が相手だと知ってなおそんなことを言いやがるその槙野という男が、心底気に食わなかった。


「つーか……要は嫉妬じゃねーか…」


一緒にいられることに対する…。


はーもう。

俺留年しよっかな…。