「ああ、そうだ」


突然なにかを思い出したように先輩が言った。


「推薦受けるって言うから今日先帰ってな」


「ま、まだ言ってなかったんで…」


決めてたんなら言おうかすぐに。ね。

先にあたしに言ってくれたのは嬉しいけどさ。


「じゃあ美紅ちゃんと帰ろうかな…」


杏子は部活だろうし。

…あっ。待てよ。

美紅ちゃんも彼氏が……。

はーあ。

仕方ない一人で帰るか!

相変わらず門限言い渡されてるし。

冬になったら三十分早めるとか言い出したし。


「ハァ……」


「無理なら別に今日じゃなくても…」


「あ、いえ。そうじゃなくて…那智兄がその…」


「は? …なんで兄貴が出てくるわけ?」


ですよね。

唐突ですよね。


「なんでもない!」


首を振って時計を確認し、「もう行くねぇ~」と言いながらもう駆け出した。