「そこらにはちょうど、お袋の実家だった空き家がある。誰も住んでねぇし名義も俺」 「……」 「住むのはタダ」 「……」 イヤ…イヤ。 言わないで。 これ以上……なにも言わないで! 「……受けようと思う」 「……っ」 …行っちゃう。 先輩が、行っちゃう。 遠くに……行っちゃう。 密かな決意を、告げられた夏の日だった。 そしてこの日、八月十一日は……。 …この日は、あたしの十七の誕生日…。 記憶に残る誕生日となった。