そーっと取っ手を下に押してみた。


「わっ…」


あ、開いちゃったんですけど!?

いいの?


戸惑いながらも中に一歩入ってみた。


「あ。先輩…」


なんだ…そこにいたんだ。

じゃあ開けてくれればいいのに…。

ちょっとこあかったじゃないっ。


軽く手招きをされ、首をかしげながら歩み寄る。

……と。


「きゃっ……!?」


短く小さなあたしの悲鳴にも似た驚きの声。

それと同時にバサッとバッグの落ちる音がし、それ以降あたりはしーんと静まり返った。


玄関に入るなり、先輩が突然あたしを抱き寄せたのだ。

その勢いで、手に持っていたバッグは落ち、あたしは危うくこける所。


「…せ……先輩…?」


ど、どうしたんだろう。

急に……。



……急?

果たして……本当にそうだっただろうか。