「ばいばい先輩」


「ん」


あっという間に家の前まで着き、いつものように額に軽くキスを受ける。

もう一度手を振り、門の中へ入った。


「ってうわあ!」


玄関の取っ手に手をかけようとした途端ガチャッと扉が開き、驚いて声をあげてしまう。


「あ…那智兄…」


せ、先輩は!?

ももももう帰ったよね帰ったよね!?


「なんだ。早かったな」


「あ、うん…。まあ…。な、那智兄どっか行くの?」


念のためほんの少しでも引きとめようと、話題を振ってみる。


「ああ。ちょっとな」


「そっか…」


……って続かんわ!!


「んじゃーな」


「あ…」


慌てて手を伸ばすけれど、それは宙を切るばかり。

でも視線の先に先輩がいないのを確かめ、ほっと胸を撫で下ろした。


いくらママに丸め込まれたとはいえ…。

なんか怖いからね。

ずっと前に言ってた“アレ”…。

今年の春あたりにも言ってたんだ。


『悠由に男ができたら? …そいつコロす』