――篠原龍樹に彼女騒動から数日が経った。

噂は案の定広がりまくっていた。

もう二年生で知らない人はいないんじゃないかってくらい。


「あっ澤村さん! 篠原先輩と付き合ってるってホント?」


「えっ…いや…その…」


あたしは顔も知らないような人から度々聞かれる。

そのたんびに杏子がどこからともなく飛んできて、助けてくれるんだ。


「ありがとう…杏子」


「まったく…。あんた嘘つくの下手すぎだから!」


この台詞も何回聞いたことだろう。

一回認めたからこういうことになってんのよ、と杏子から何度もお説教を受けた。


「ホーント大変そうね?」


懐かしいくらいの柔らかな声が、頭の上に降ってきた。


「み、美紅ちゃん!!」


わーっわーっ。久しぶりだぁ!


美紅ちゃんに彼氏ができたと聞いてから一度も会っていなかった。

同じ学校同じ学年なのに、不思議なくらいに。


「ひさしぶりぃ~~っ❤❤」


「あら~よしよし」


思わず抱きつくと、いつも先輩がしてくれるみたいに頭を撫でてくれた。