数時間後、こっそり家に帰って財布を手に取りこっそり抜け出したあたし。

なんとなくばつが悪くて…。


幸い、那智兄は不貞寝をしているらしかった。


「兄貴は?」


先輩の元へ行くと、やっぱり気になっていたのかそう聞いてきた。


「ママが『不貞寝してるわよ』って言ってました」


「不貞寝って…」


先輩……。いっそ笑ってやってください…。


すたこら前を歩く先輩の右手の指先をきゅっと握り締めた。


その十分後には、もう学校が見えてくる。

ああ…名残惜しや。

一晩中一緒にいたくせに名残惜しい。


「じゃあお先に」


内心ため息をつきながら、握っていた手を離した。


「悠由」


「はぁい?」


離したはずの手を再び掴まれ、きょとんとして振り返る。


「……」


「? …どしたの先輩」


「いや…なんでもない」


「じゃあな」と軽く唇に触れ、先輩は先に行った。