…そして。
二十分後のあたしは、泣きそうな顔をして先輩を見つめていた。
「……じゃ一緒に入る?」
「……」
ぶんぶんぶんっと大きくかぶりを振る。
「じゃ待ってろ。すぐだから」
「…………うん…」
頷くと、頭を一撫でして先輩は立ち上がった。
歩いていく後姿をうるうる見つめる。
「……」
「……」
ちらっと振り返る先輩。
「…ったくどうした? 本当になにもなかったのか?」
戻ってきて、あたしの頭を胸に抱え込むようにしてそう問う。
…先輩……優しいよぅ…。
どうしよう。キュンキュンしちゃう。
「なにも…ないです」
これは本当のことだから、ぽつりと返した。
ただなんか寂しい。
先輩の後ろ姿見るのやだ。
あったかくないのやだ。
一秒でもやだ…。

