そっと右手で頬に触れ、親指で涙を拭う。

反対の手で頭を撫でてやっているうちに、なんと悠由は寝てしまった。


「……」


起こしたくねぇ。

でも時間が……。



『那智兄に門限言い渡されました……』



という悠由の言葉を思い出す。


ちらりと時計に目をやると、もうその六時半だ。

そういやさっきから、しきりにバイブ音がしていた。

悠由の携帯か…。


「…わり」


一応一言謝って、片手でごそごそとポケットの中を探り携帯を開いた。

…別に中身を盗み見するわけじゃない。

電話が鳴ったら出るだけだ。


「……ってすげぇ着信の量だな」


メールも十二件?

異常だろ……兄貴…。


呆れていると、手の中の携帯が震えだした。

ディスプレイには『那智兄』と表示されている。


少し迷ったが、意を決して通話ボタンを押した。


『悠由!! 今何時だと思ってんだ!』


「っ……」