ニヤニヤ笑っている翔くんだ。

冷めなかったしーとか言いながらも、可笑しくて仕方ないという表情。


「いててっ」


そんな彼の手の甲を抓り上げる杏子。

慌ててあたしの肩から手を退かした。


「いってーな。戯れだよた・わ・む・れ」


「尚更許せねーわよ」


杏子はどうも、翔くんが気に入らないらしい。

顔を見ると露骨に嫌な顔をする。

いいコンビだと思うのになぁ……。


これを言うと杏子にシメられ兼ねないから、言わないけど。


睨み合っている二人から逃げるように、こそこそと席に着いた。

天敵だな、もう。


やがて予鈴が鳴って、翔くんも戻ってきた。

杏子の席を振り返ると、杏子も座っている。

カタ……ついたんだ。

しかも杏子が勝ったんだね…。


「あーあもう。悠由ーあいつなんなわけ?」


「引っ越してきてすぐくらいに知り合ったんだよ。もう長いよ」


「ふーん……」


どこかつまらなさそうな表情で、ぷいっとそっぽを向いてしまった。

よっぽどヘコむことでも言われたんだろうか…。

あの数分の間に…。