―――……


「遅い!!」


「にゃんっ」


…帰宅時刻、六時三十五分。

過去最高記録だ。

別れ際に先輩がキスをしてきて、五分遅れてしまった。


「お前はなぁ~~~っ」


握り締めた右手がふるふると小刻みに震えている。

た、たしかに遅れたけど!

でも五分だしそもそも六時半に帰るって言ってないしまだ明るいしあたし高校生だし!


「まあまあ那智。そのくらいにしてやりなさいよ」


くすくす笑いながらママが諭す。

あたしが先輩のとこにいたのに気付いてるんだろう。


「……次はないぞ」


「はぁい…」


渋々といった表情で引き下がる那智兄は、まだなにか言いたそうだ。

言われる前に、自室へ逃げ込んだ。


「ふう……」


ちょっと前まではもっとこう…クールな感じだったよね。

あたしのあの怪我を境に、ちょっと壊れかけてる気がする。

まあ、今までまっすぐ家に帰ってて、六時過ぎたことなかったしな…。

怪我する前でも、そうなってたら怒ってたかも。