帰り、先輩は授業にでたおかげで先生に呼び出されたらしく、たまたま部活のない杏子と帰ることになる。


「今日も『先帰れ』ってそっけないメールが来たの?」


「ううん。お昼に『逃げられない状況だから』って言われたよ」


「逃げられないって…なにそれ」


うん、そこはあたしも気になるよ。

なんかね…色々。

相当めんどくさそうな顔してたからなー…本当に逃げられないんだろうな。

てかそれ以前に、逃げるってどうよ。


「あ、悠由! ……ちゃん」


「翔くん?」


教室を出ようとしたときに、翔くんの声に呼び止められる。

『悠由』と言った瞬間に、杏子がものすごい……それはもう、ものすごい、般若のような顔で睨んだために、慌てて『ちゃん』をつけたようだけど。


「な、なんだよ。ガキの頃と違うんだから、いいだろ?」


「いいわけないでしょ」


つっけんどんに言い放つ杏子。

なんか……怖い、かも。


「あ、あの…なに? 翔くん」


「あー……あ、うん…。や、やっぱいいや!」


「えっ?」


「俺今にも噛みつかれそうだし」


…ら…。

き、杏子ってば…。