「あ…いや。別にお前が思ってるようなことじゃないから」
「え?」
慌てて、言い訳するように早口で言うと、「サンキューな」と頭に手を乗せ、顔も見ずに足早に去っていった。
「……」
?
しばらく立ちすくみ、最終的に首を傾げてうちの中に戻った。
なんだったんだろ…。
あんな先輩、珍しいな?
どんなにあたしが頭を捻ってみても、あの先輩のことなど分かろうはずがない。
そう思い、すぐに諦めた。
「……しかしどうやって写真を撮ろう」
思い出せば……なにやらそっちのほうがずいぶんと大事なことに思える。
というか実際、あたしにとってはこっちのほうが大事なのだ。
先輩のあの表情の真理よりは。
少なくとも、怒ったり悲しんだりとか、そういう負の感情でないことは分かるから。
「むむむ……」
唸りながらひたすらに首を傾げる。
隠し撮りはもう、何度も失敗しているし…。
事前に許可をとる、というのもダメだったし。
突然正面からパシャッなんていうのも、きっとダメだろうな。
…なんていう、くだらないことに頭を悩ませて、あたしのこの日の夜は過ぎていった。

