家の前まで着き、「また明日」と手を振った。

また明日、と言えることが、なんだかとても嬉しい。


玄関に入ろうとして、ふと思いついた。


「先輩。待ってて」


「は?」


くるりと振り返り、左手で静止の合図をし、わけの分からない様子の先輩に再び背を向ける。


小走りに中へ入り、幸い那智兄はいなくママは二階で由那を寝かせていることに気付く。

そのうちにささっと用事を済ませ、ぴゅうっと走って外へ出た。


「お待たせしました。はい」


入るときに持っていた鞄と引き換えに、紙袋を持ってきた。

それをずいっと差し出す。


「? なに?」


「残り物で悪いんですけど……ぜひお夕飯に」


お昼も食べてないわけだし、前の日もその前の日も、きっとまた、まともに食べてないだろう。

そう思って、今朝のお弁当の残りを詰めていたパックを手渡した。


「ああ。サンキュ」


ガサッと受け取り、なぜかばつが悪そうに顔をそらす。


「先輩?」


もしかして、迷惑だったかな…。


どんどん眉尻が下がっていくのが分かった。