渋々といった表情で、先輩はようやく下ろしてくれた。

その代わりに先輩の制服の袖を掴み、ちょこちょことついていった。


ガラッと扉を開けて、あたしが先に入ると先輩も入り、ピシャッと閉めた。


「この時期に来るともっとあったかいですね!」


本当によく陽の入る部屋だ…。


にぱっと顔が綻ぶのを感じた。


「!」


それと同時に、後ろからふわっと先輩のにおいがあたしを包み込む。

ちょっとびっくりしてドキッとしたけど、ぎゅっと先輩の腕を掴んで頭を預けた。


「…抱かせて」


思いっきり抱きしめながら、それを言う?


「今…」


「抱きしめてるじゃないですか」と、言おうとした。

言おうと…振り返ったら、目の前に影ができて口を塞がれ、言えなかった。



「……もう許可とんねーよ?」


風が吹くように囁く声が、あまりにくすぐったくて。

心地よくて、甘い響きで。


思わずゆっくり目を閉じて、先輩に身を委ねた。



――…揺れなかった。

あたし達、揺れなかった。

この一週間は必要な時間だったのかも。

たったこれだけで揺れる絆じゃいけないぞって、神様が言ってたのかも…。