――悠由サイド――


「せんぱ~いっ」


屋上へ駆け込み、壁に寄りかかって立っていた先輩に抱きついた。

あったかくて優しいこの胸の中が大好き。


「ふふふ……」


先輩は黙って抱きしめ返して、頭をぽんぽんしてくれる。


「…飯、食うか?」


「はい!」


ぴょこっと顔だけ上げてそう返事をし、先輩の背中に回した手に持ったままだったお弁当を差し出した。


「どーぞ」


「ん」


この人は……口ではあまり喋らない。

でも代わりに、ちゃんと態度で教えてくれる。

例えば今のキスは……『サンキュー』って言ったんだ、とか。

ちゃんと分かるんだ。


「今日のたこさん入りですよたこさん」


「たこ?」


首を傾げてぱかっとお弁当箱の蓋を開く。


「……ああ」


中身を見て、なるほどという顔をした。