――悠由サイド――

先輩……怒ってなかった。

とっても優しい声であたしを呼んでくれた。

いつもみたいにあったかい心で、抱きしめてくれた。


嬉しくて、そうっと抱きついた。


「先輩……待っててくれたんですか?」


さっき「おせーよ」って言った。

それを思い出し、静かに聞く。


「……そーだよ…」


なんか悪いか、とでも言い出しそう。


「どうしてさっさと見捨てちゃわなかったの?」


もしかして…槙野くんに流されてたかもしれないのに。

あたしは先輩を拒んだのに。


実際そうなったらなったで困るわけだけど、気になって聞いてみる。


「そうだな…」


「…?」


考え込むようにぽつっと落とすと、あたしの顔を見て言った。


「お前が俺に愛想つかして、嫌って、嫌って。千年くらい背中向け続けたら、あるいは諦めつくかもな?」


「…!!」


絶対にあり得ない。

先輩があたしに愛想をつかすことがあっても、あたしが先輩を嫌いになることなんてない。


「だから、こうやってお前が俺の元に戻ってくるうちは、いつまでだって待ってるよ」