……?


意識を飛ばそうとする前に。

本当に、目を閉じた瞬間に。

微かに古びた蝶番の音がし、続いて、愛しくてならない、聞きたくてならなかった、あの、鈴の鳴るような可愛らしい声が聞こえた。


気のせいか? と思った。

俺はそんなにも求めていたか? と思った。

はたまた、一瞬で寝てしまい、夢なのか…とも。


でも、目を開けると、そこには。


「先輩……」


たった一週間ほどのことなのに。

とても久しぶりに思える――…悠由の姿。


なにを思ったか、目が合った瞬間にカッと頬を赤らめる悠由。

いつぞやの……まだ会ったばかりの頃のようだ。


「悠由…?」


少しだけ身を起こし、分かりきったことを問う。


「はい…」


微かにはにかんで頷く様は、どこからどうみても俺の悠由だ。


「! きゃっ…」


最後に会った日の、別れ方が別れ方なだけに。

制御が利かなくなって、地に腰を落としたまま悠由の腕を引いた。


落ちてくるように俺の胸に倒れこんできた悠由を抱きしめる。