「妄想癖は相変わらずだからか知んないけど、リトマス紙みたいに赤くなったり青くなったりさ」


またもくっくと必死で笑いをこらえている様子。

あたしは、ぷくっと頬を膨らまして杏子を睨んだ。


やがてチャイムが鳴り、先生が入ってくる前に、ベランダから教室へ上がる。

正直、席に座ると槙野くんがいると思うと、あまり行きたくない。

そうは言っても仕方がないのだ。

先輩みたいに、サボるわけにもいかない。


「……」


……サボる?


「あら? 悠由どしたの?」


何気なしに心の中で呟いた言葉。

自分でそれにピクッと反応してしまった。


立ち止まったあたしを、不思議そうに振り返る杏子。

そんな杏子の目をじいっと見つめる。


「な、なによ?」


…サボる……か。

そうだよね。

先輩、学校に来てたらほとんど屋上にいるよね。

なにも休憩時間にこだわらなくたって…。


確実にいるのは、たぶんお昼の一時間前。

そのときなら、先輩もあたしが来るとは思わず、いつも通りぼけっとしてるだろう。


なんだかまるで、寝首をかきにでも行く気分だ。