収入源を襲われたピアット一族が、懸命になって俺を探しているだろう。


しかし、此処で捕まる訳にはいかない。俺は、この女を利用して暫く身を隠そうかとも思ったが、かえって足手まといになるかもしれないと思った。


また、下手をしたらピアット一族に居場所を知らされてしまうかもしれない。


此処は、彼女を信用せずに自分の直感をしんじて行動しなければいけない。


『やっぱり、お前を連れて行くわけにはいかない。

ひょっとしたらお前がピアット一族の身内とも限らねぇからな!

俺が寝ている間に、寝首を掻かれては敵わないから、お前は此処でほとぼりが冷めるまでいろ!

俺は今から日本に帰る。』


と言いながら相手の目の奥を覗き込んだ。


勿論、日本に帰ると言うのは嘘である。


そして俺は荷物を纏めた。


それらを車にもう一度戻す為に外に出た。


そっと部屋の中を覗き込むと案の定彼女は何処かに電話していた。


俺は滑り込むように部屋の中に入った。


俺に気付いた彼女は、目を見開きながら驚いたようだが、直ぐに


『同僚に電話していたの!チョット心配に成ったから!』


と言ってるが、そんな事を信じる俺ではない。


しかし騙された振りをして、


『そうか!それで、如何だった?心配していただろう。』


『ええ!

でも、私は怖くなって裏口から逃げたのよ!

もう今日は早退にしておいて!

明日きちんと出勤するから!

って言っておいたの。』


俺は、笑みを浮かべながら彼女に近ずき、そして一気に彼女の鳩尾に一発フックを打ち込み気絶させた。


長居は無用である。


早く此処を出なければ、俺自身やばくなる。


俺は、直ぐに車に乗り込み北に向って走り出した。