ランビット総督が部屋に入って来たのを,微かに開けた目の端で捉えた俺は、腹が煮え繰り返った。


しかし、彼の手には、SIGのP226が握られていた。


最近シークレットサービスでも良く採用される型で、口径9mmの自動拳銃である。


自衛隊警務隊仕様のSIGのP220と同じ口径で、似かよっているが、装弾数がP220は9発しか入らないのだが、P226は15発も装弾出来るのである。


それを右手で玩びながら、いきなり銃把で俺のコメカミを、打ち据えてきた。


意識を取り戻したふりをしながら、目を開けて驚いた振りをしたがすっかりばれていた。


『Mr.中山、久しぶりだな。 何故俺がここに居るかは、大体見当は付いていると思うが、これは俺のビジネスだ。

タイの政府官僚をしているだけじゃ得られないビッグマネーを俺は稼いでいるんだ。

今,世界の至る所で戦争や内乱が日常茶飯事の様に起きている。

こんな美味しい儲け話は他に無いと言っても過言ではないくらいに儲かってしょうがない。

その邪魔をされたんじゃ、折角お前を一人前の殺人マシンに育ててやったのに、恩を仇で返すつもりか? 

お前は如何して執拗に日垣グループの周りを嗅ぎ回り、何が目的でここに忍び込んだんだ?』


『俺は4年前の内乱で大きな怪我をしたが、俺の友人の何人かは巻き添えを食って死んでいった。

その中には妹の恋人もいたんだ。

お前等の金儲けの為に大事な友人を無くした俺の気持ちなんか、判らないだろうが、あの時から自分なりに調査して、復讐をするチャンスを待っていたんだ。

しかし、まさかあんたが後ろに居たとは驚きだね!』


と言って、睨みつける様にジッとランビット総督を見据えた。