「ごめん、好きだ」
「えっ」
言葉が先だったか、体が先か、手を伸ばすと、いとも簡単に彼女は僕の元へ収まった。
「僕は最低な人間で、こんな事を言う資格はないけど、言わなきゃ気が狂いそうで」
こんなに人を求める事があるのかと疑うほど、彼女が恋しい。
こんな感情、小説の中だけと思っていた。
「衝動なんかじゃない。もう、衝動じゃ済ませられない」
「曾根君……」
「今まで、本当にごめん」
肩を抱き締めると、すっぽりと収まってしまって、どこか不一致だった。
そっと腕を抱き返してくれる彼女が愛しい。
「あの男の代わりにはなれないし、あいつみたいに優しくはできない。でも、僕は僕として、もうどうしようもないくらい、惹かれてる」
優しい香りが気が付けば僕を満たしていて、香りすらも、愛しすぎて、苦しかった。
「先輩と曾根君は違うよ。冷たいし、怖くて、ひどい所もあるけど、私は曾根君を代わりだなんて思ってない。曾根君が、いい」
彼女は、ちゃんと僕を見ていた。
僕を、僕として。
曾根千暁として。
瞼が熱くて、熱くて堪らなくて、僕は目を開く事ができなかった。


