少年少女リアル

 汗の引いた背筋が寒い。
辺りはもう暗くて、近くの街灯はいつの間にか光を放っていた。
彼女から視線を外さないまま、頭の遠いどこかでそんな事を思っていた。

「でも、そんな風に言われたら責めようがないじゃない。謝られたら、どうしていいか分からないよ」

許すとも許さないとも言ってはくれない。
呼吸はもう調ったはずなのに、僕は息が苦しくて仕方がないままで。

「私、きっとまた曾根君を怒らせる。優しくされたら、困るよ」


ああ。

すぐに追い掛けてきて、よかった。

許すとは言わなかった。
それでも、許された気がした。

彼女は、奈央は、まだ僕を好きでいてくれた。

空気で分かる。

僕の期待していた言葉よりも、随分有り余る答えだった。

今まで何かに口元を塞がれていたのかと思うほど、にわかに新鮮な空気が気管へ入ってきては、肺に立ちこめるのが分かる。
息を吐くと、胸の芯がじんとした。

「……奈央は、何で僕を好きだって言ったの?」

黒目の輪郭がはっきりするほど目を見開くと、彼女はたちまち耳まで真っ赤になった。その速さ、リトマス試験紙の如しだ。

「ほ、本当に、本っ当に最低だよ!」

「は?」

「今まで耳も傾けなかったのに。言わせようとするなんて、狡い」

「だって、最低って知ってるのに、可笑しいじゃないか」

感情的になったのがスイッチとなってか、彼女はまた真っ赤な目に涙を含ませたまま、口を結んだ。