「絶対的な、曾根君らしくない行動なんてない」
こんなにも最低なのに。
これが僕らしいなんて。
人を犯そうが、殴ろうが、曾根千暁らしい行動だなんて。
あんまりだ。
酷い答えをくれる。
最低な、僕も、僕自身。
それを知る人がいて、それでも正面から見ようとしてくれる人がいて。
それが僕だと、曾根千暁の一部であってもいいと思ってくれる人がいる。
「泣きそうだよ」
顔を押さえると、閉じた瞼の中で、もう涙でいっぱいになっているのが分かった。
「どうして泣くの?」
「分からない」
許されたような気がした。
涙が止まらなかった。
僕を苦しめていた毒素が、溢れ出ていくような感じがした。
「私、カウンセラーじゃない」
「向いてるかもね」
「男の子が女の前で泣いちゃダメよ。女々しい」
「勝手に、出てくるんだ」
「まるで子供だわ」
夏目さんは淡々とそう言ったけれど、傍に座ったまま、黙っていた。
「頭が、痛い」
「大丈夫? 顔色が真っ赤」
ぼんやり目が合うと、夏目さんの手が僕の頬に触れた。
冷たく、人間の手じゃないようで、けれど、乾燥した肌の感触がひどく生々しい感じがした。
「わ、凄い熱じゃない!」
ぐらりと夏目さんは分身した。
やっぱり、人間じゃなかったのか。
「どうして、こんな熱で――」
あ、と思った途端、電池切れみたいに、僕の意識はそこでぷつんと切れてしまった。