「どっちでもないよ。相方待ち」
「そう、奇遇ね。私も」
顎で女子トイレを指す。トイレからはみ出て、数人並んでいるようだった。
あの列から帰ってくるのが早いか、冴木が戻ってくるのが早いのか、いい勝負だ。
夏目さんは足首まで丈のある、深緑の衣装を着ていて、夏目さんの配役が薬売りだった事を思い出した。
ムームーのようなもので、ワンピースと言うには華やかさが全く足りない。
それが似合っていて、様になるのだから可笑しい。
「衣装、凄いね。本当に怪しい」
よく見るとベロア生地で出来ていて、何だか苔みたいだ。
「曾根君に言われたくないわね」
自分の衣装と見比べる。
思わず笑ってしまった。
二人共、なんて格好だ。
「カメラ持ってくればよかった」
僕がそう言うと、鼻で笑って、結構だと断られてしまった。
「声が少し変」
「ああ、風邪引いたみたいなんだ」
「曾根君も風邪引くのね」
「僕が馬鹿だって意味?」
「そんな事言ってないじゃない」
そう言いながら、声が笑っている。
「珍しいって事」
「そうかな」
「そうでしょ」


