「おいおい。大丈夫かよ」

冴木が眉頭を引き上げて顔を覗き込んできた。灰色の目が浮いて見える。

「風邪か?」

「多分」

咳き込んで胸の辺りがじんとする。
何か思い立つと、冴木はポケットの中を弄り、何かを差し出した。

「喉飴。やるよ」

「助かる。いいの?」

「昨日ライブ前に舐めてたやつ。もう要らないし」

「ありがとう」

早速もらった喉飴を口へ放り込む。
ハッカのきつい、つんとする味だ。美味しくはない。けれど、ないよりはマシだ。

僕を気遣ってなのか、ただ何となくなのか、冴木は花壇の縁に腰掛けた。どちらにしろ有り難い。倣って、僕も横に座る。

ここからは校庭が一望できた。

野外ステージでは男子生徒が数名、昔流行った少女アニメの曲に合わせて踊っている。
体格から見てラグビー部だと思う。何とも不似合いだ。

観客からは時々笑いが起こった。