「あ、」
急に何か思い出したのか、佳月は立ち上がって両側のポケットを弄り始めた。
何かと思って見ていると、小さく折られた紙が二枚中から出てきた。
「何か番号渡されたんだよな、そういえば」
「へー。可愛かったの?」
「普通」
そう言いながら、顔はニヤリと頬に皺を作っている。憎たらしい事に、きっと可愛かったのだろう。
「ねぇ、ちょっといい?」
急に声を掛けられ、僕は見ずとも何となく平野さんだと分かった。
佳月は眉だけで返事をする。もちろん「ちょっといい」はずがない、と言った表情の返事である。
「看板移動させに行ってほしいんだけど」
「看板?」
看板、と言うと条件反射のように嫌な事しか思い浮かばなかったが、看板はもう作り終えたし、運んである。
もう、僕が看板の件で携わる事はないはずだが。
「看板大賞の審査と投票があるから、第二体育館に移動させないといけないのよ」
「は? せっかく運んだのに、また動かすの?」
それもただの徒労だったかと呆れ笑いが零れる。
「段取り悪いな」
「仕方ないじゃない」
「糞生徒会だな」
佳月が毒づくも、意味はなし。目を付けられたが最期、逃げられないらしい。
「とにかく、悪いけど行ってきて!」
「俺、着替えてる最中なんだけど」
「まだ大丈夫でしょ。第二体育館で、奈央が説明聞いてると思うから」
一方的にそう言うと、平野さんはどこかへ行ってしまった。
どうしても僕の前に彼女は立ちはだかるらしい。
佳月は舌打ちしながらも、衣装をはだけさせたまますぐに移動し始めた。


