少年少女リアル

 はい、と向井さんは淡いピンクのハンカチを差し出した。隅に綿毛のようなキャラクターが刺繍されている。

「こっちの面は使ってないから」

「え?」

「使って?」

使って?って言われても。
これだけびしょびしょに濡れていると、使えるわけがない。佳月に渡されたなら、まだともかく。

「いや……ありがとう。でも、いいよ」

……佳月がハンカチを渡してくる事なんて有り得ないな。気持ち悪い。

「だめだよ、そんなに濡れてるのに」

「大丈夫だよ」

「私が傘忘れちゃったから……」

泣きそうな顔するなよ。しないでくれ。

「右だけ、びしょ濡れだよ」

「大丈夫だって」

「で、でも、風邪引いて曾根君が死んだら……」

「……死なねーよ」

いつの時代の話だ。