少年少女リアル

 トンネルを抜け、並木道に入ると、急に辺りが静かになった。
車の音が遠ざかるだけで、こうも変わる。雨音でさえ、穏やかになった気がした。

「曾根君」

「何?」

それでも、雨が邪魔して、何だかまだクリアーには聞こえない。

「ありがとう」

「傘? 別に。ついでだし」

「傘もだけど」

視線は相変わらず先にあったけれど、頭では静かに疑問符が飛んだ。

「もう口も利いてくれないかと思った」

いや、と瞬発的に否定した自分が単純すぎて、恥ずかしい。
背筋が落ち着かないまま、三歩、間を空けてから、「そうだね」と言った。沈着な声だった。

「僕も、もう話す事はないと思ってた」

話してはいけない、とも思っていた。

それなのに、どうして、今こんな状況になっているのか、自分でも不思議だ。


黙ったまま、彼女は余所見をしているようだった。
横目に彼女の様子を窺ってみたが、睫毛の先は僕と真逆の方へ向けられていた。