「どんな形で始まって、どんな経路を辿るかなんて、そんなに関係ないんだと思う。その人とだから芽生える感情っていうのが絶対にある」
頭の中で再生する映像を、見透かされているのかと思った。
嫌になるほど、彼女、向井さんの映像が流れている。
停止ボタンを連打しようが、止まらない。
衝動しかないはずの、千切れ千切れの映像。
優しく笑った顔や、人より小さな声。赤くなった耳。
それから、「先輩」に動揺する彼女の表情。
止まらない彼女の映像が僕を苦しめる。
『どんな形で始まって、どんな経路を辿るかなんて、そんなに関係ないんだと思う』
夏目さんの言葉が、勝手に頭の中で反芻する。
向井さんは僕を、加治原を忘れるために、代わりとして見ただけなのに。
始まりも経路も、擬似的な恋愛でしかないのに。そう理解しているのに。
それなのに、何なんだ。
どうして、僕が彼女に困惑しなければいけない?
ぐるぐると回る彼女の脳内映像。
夏目さんの言葉の意味するところは、彼女自身の持つ概念や美的感覚のようなものでしかない。僕の事等、知るはずもないのだから。
けれども、銀河系の外から来た宇宙人だったら、僕の頭を覗き込む事も不可能じゃないのかもしれない。


