『井上、お前少しは考えろ。考査の範囲だし、この程度の問題は出来ないと恥だぞ。』

多部は冷たく言った。


――だから、使わないってば!
進学先にわざわざ数学ないとこ選んだもん。
考査なんて他のでカバーするし。


『――分かりません。』

背の高い多部は真子の所まで歩み寄った。

『はい、居残り決定な。』

真子の机に【17:20多部まで】のメモが置かれた。

多部は良く生徒を呼び出すのにメモを使った。


真子は不服であったが黙ってメモを受け取った。
そのままクシャクシャとポケットにしまう。


――なんなの、もう。腹立つ!

真子は前の生徒の椅子を蹴った。