君だけしか映らない

佐伯悠哉の言葉のせいか、バイトが終わるまで笑美の表情に笑顔はなかった。


「荒川さん、あがっていいよ。」


「はい。お先に失礼します。お疲れ様でした。」



ふと店内を見渡すと佐伯悠哉の姿はなかった。

(やっと帰ったか…。)


店内に佐伯悠哉がいないことに笑美はホッとした。


今日は精神的に疲れた日だった。ファミレスの制服から学校の制服に着替えて店を出た。



「やっときたか。帰るぞ」

え…?


驚いて顔を上げるとそこには会いたくない人物がいた。


「佐伯くん…帰ったんじゃなかったの…?」


「今から帰るけど?」




「いや…だからなんでいるのよ…。私はもうとっくに帰ったと思ったんだけど」

「なんでって…。そんなんお前を待ってたからだけど?」


は?何言ってるのこの人。


私を待ってたって…


「…意味わかんない。」


私の顔なんて見たくないんでしょ?