君だけしか映らない

「あの…うちに何か用ですか?」



(………!!)


ビクッとしながらも声をかけられた方を向くと、ブレザーの制服を着た男が立っていた。



(……もしかして、荒川の弟…?)



「あっ…えっと荒…笑美さんって帰ってますか…?」


「…姉、ですか?」



(やっぱ弟だ…)



弟は怪訝そうな顔でオレを見て「ちょっと待ってて下さい」と言って、家の中に入っていった。



待つこと数分して弟が家から出てきた。


「あの…まだ帰ってきてないみたいです」



「あっ…そうですか…。ありがとうございます」



そしてオレはそのまま荒川の家を離れた。



驚いた。荒川に弟がいたなんて。しかもあのブレザーって第一高校の制服だよな?っていうことは高1でオレらの下か。



だけど、荒川と弟って全然似てねーな。あの弟、相当モテるんじゃねーか?



…って今はそれどころじゃねーか。



ここら辺の土地に全く詳しくないオレは、惜しがりながらも来た道を戻った。




―――結局この日、荒川に会うことはなかった。