君だけしか映らない

教室に向かうまでの間、オレとすれ違う女たちはキャーキャーとうるさい。



「は〜…」


「どうしたの?溜め息なんてついて」



「…この格好、やっぱ嫌だな」


「なんで?似合ってるよ。あぁ…もしかして周りの女の子たちの視線が気になる?」


「…オレは見せもんじゃねーよ」



「まぁそれはそうだけど…でもみんな『かっこいい』って言ってるんだしいいじゃない。何が不満なの?私には羨ましいと思うけど」


そんな会話をしてる時、すれ違った女たちの会話が聞こえた。


「ヤバい!!佐伯くん超かっこいい!!」


「わかる!!ねぇでも、隣の子…クスッ」


「笑っちゃ可哀想だよ…でもフフ…似合ってないよね」


「罰ゲームか何かかな?なんかウケるわ」



…最悪だ。聞こえてるんだよ。今の会話絶対に荒川も聞いてたよな…。


そっと荒川の横顔を伺うと…


(…………!!)


顔を真っ赤にして唇を噛み締め、グッと堪えてる様子だった。


「荒川…」


オレが話しかけるとハッとしたように荒川は顔を上げる。


「ははは…。大丈夫全然気にしてないから!自分でも似合ってないのわかってるし」


無理に笑顔を作る荒川に胸が締め付けられた。