君だけしか映らない

「正直よくわからないな…だって佐伯くんとまともに話したのって、今日が初めてじゃない?でも一つだけ言えるのが…」


オレはじっと委員長を見た。



「意外に…優しいとこかな」



「優しい……?」



何でもない普通の言葉に少しがっかりした。



「だって…私みたいな女に謝ってくれたから。」


「…………!!」


「佐伯くんはモテるから、黙ってても可愛い子が寄ってくるでしょ?私は見た目こんなんだから、男子は私に話しかけて来ないし、派手目の女子にはバカにされることもあるし…。」


「………。」


「だから佐伯くんも私のこと嫌なのかなって思ったけど…こうやって今謝ってくれた。…こうやって今普通に話してくれてる。…佐伯くんは優しいと思うよ。」


そう言って委員長は微笑んだ。


「………っ!!」



『優しい』なんて言葉、普通すぎて嫌に思った自分が今はその言葉がとても嬉しくてしかたない。



「委員長の名前ってなんだっけ…?」



「えっ!?今更それ聞くの?…荒川笑美だけど。」


自分から女の名前を聞いたのは初めてだった。



「『えみ』ってどんな漢字なの?」


「漢字?笑顔の『笑』に美しいだけど?…って私完全に名前負けしてるけどね」


そんなことないとオレは素直に思った。



『笑顔が美しい』


さっきオレに微笑んだ委員長は笑顔がよく似合ってた。



(荒川…笑美か…。)



この日を境にオレは委員長を荒川と呼ぶようになった。