ふと、ベッドの側の棚に置いてあるトナカイのぬいぐるみと目が合った気がして、手に取る。
『ママはパパの事忘れちゃったのかな…?』
年季の入ったトナカイのぬいぐるみに話し掛けるかのように呟いた。
貰った頃、赤かった鼻は剥げて黒っぽくなってしまって居る。
あの時、サンタからだと思ってたこのぬいぐるみは、パパからの最後のプレゼント。
―――『そしたらトナカイさん見つかる?』
「そうだね…。愛梨亜にとってその役割をする人がきっと見つかるはずさ。だから愛梨亜、笑顔を忘れないでくれよ?」―――
トナカイが欲しかったあたし。
パパとの最後の約束。
でも…ごめんパパ…。
あたし約束守れなかった。
誰からも愛されるようにって付けてくれた“愛梨亜”って名前。
小さな頃は誇らしくて、今じゃ考えられない程にいつもニコニコした子供だった。
でも…いつからだろう、人前で中々笑えなくなったのは。
成長するにつれて、笑ってるだけじゃ解決出来ない問題が出てくる。
むしろ、それが媚を売ってると、やっかまれる事すらある。
どうせそうなら、無理して笑うより、笑わない方が良いと思うようになった。
あんなに誇らしかった自分の名前が嫌いになった。

