でも、自分から辞めてしまうことはできないで居た。そんなことは許されるはずもない。そんな勝手なこと、言い出しても答えは決まっている。
 でも、誰かが辞めてもいいと言ってくれたら喜んで辞めるのに。何か他の選択肢があったら、迷わずそれを選ぶのに。
 大人は、自分の生き方を自分で決めれるかもしれないけれど、高校生の自分には本当の意味で自分の生き方を選ぶなんて、できない。経済力もないし、決定権もない。
 その時点で、もう未来は閉ざされていた。
 でも、今日、未来への扉をひとつ見つけたような気がした。。
 本当は、それが未来への扉なのかどうかなんて誰にもわからない。
 だけど、佳奈子にとっては、初めての現実とは別の空間のように思えた。
 嫌なことをここに全部投げ込んでしまえば、もしかしたら何とかやっていけるかもしれないと瞬間、感じた。それが現実逃避だいうことも分かっていた。
 でも、佳奈子は、それでもいいと思った。
 
 校門のところに何人かの教師が立っていた。登校指導だ。
 佳奈子には、これも気に入らなかった。
 「おはよう」
 と、にこやかに声をかけながら制服がどうの、髪型がどうのとチェックを入れる。
 そんなことを高校生にもなってされるなんて馬鹿馬鹿しく感じた。
 人は見かけで判断してはいけない、と言いながら、こんなことをする。
 全く、大人のやることは矛盾に満ちていた。
 佳奈子は、風紀に引っかかるようなことはなかったが、これには嫌悪感があった。
 「あと2分で始まるぞ、いそげ」
 「遅刻するわよ、急ぎなさい」
 急げ急げ、走れ走れ、早く早く、
 もう、ずっとずっと昔から、そうやっていつも急がされて来たような気がする。
 どうして急がなければいけないんだろう。
 どうしてゆっくり歩いたらいけないんだろう。
 疑問だらけだった。