どうでもいいや、と思う日もあり、そんな日は一日を適当に過ごして家に帰る。
 そんなときは、あとで学校から連絡が来ないように、母に成りすますして欠席の電話を入れる。行かなければいけないのにどうしてもいけない日もあった。
 次のには乗ろう、次のにこそは乗ろう・・と、一日中、ホームのベンチで過ごしたこともある。友だちが心配してメールをくれることもあった。
 でも、佳奈子にとっては毎日が演技だったので、友だちとのやりとりさえ、どうしても心の通ったものには思えなかった。
 そんな自分がだんだん嫌になってきた。
 どうして自分がここに居るんだろうと思うこともあった。
 そして、こんな日常をいったいどれだけ続けたらいいのだろうと思った。
 卒業まで、こんな調子で持つのだろうかと不安になることもあった。
 それで仮に卒業したとして、その後はどうなるのだろう。
 全く、先が見えなかった。
 だだっ広い現実の先の未来など、想像もつかない。ただ真っ暗なトンネルが永遠に続いているような気がした。そこをただ、ずっと歩いている自分の姿しかなかった。
 最近では、家に帰ってからも演技をしなければならない。
 学校を楽しいふりなどするつもりはなかったが、何を言っても分かってはもらえない両親に、もうこれ以上、自分の気持ちをいろいろ話すのも面倒になっていた。
 何を話したら両親が満足し、安心するかもわかっていた。
 わざわざ不機嫌にさせるようなことを言う必要もない。どうせ、理解などしてもらえないのだから。そんな意味の無い会話が、本当に意味も無く毎日繰り返された。
 子どもの気持ちにも気づけないような親は、馬鹿親だと佳奈子は思った。
 
 地下鉄を降りて走ったことなんて、多分、無い。
 遅刻するに決まっているのにわざわざ走るなんてくだらないと思っていたから。
 遅れていって目立つくらいなら、いっそのこと休んでしまえばいいと思っていたから。そこまでして頑張って行く意味なんて無いと思っていたから。
 佳奈子にとって、学校は、もうどうでもいい場所になっていた。