佳奈子は、中学のときはかなり活発だった、と自分では思っている。
 友だちもたくさん居たし、特に人間関係で悩んだことも無かった。
 もちろん、普通に喧嘩したり、恋愛したり、傷ついたり苦しんだりしたこともあったが、そんなのは当たり前のことだった。
 いろんなことに好奇心があって、たくさんのことに挑戦してきた。
 部活にも生徒会にも積極的に参加した。勉強もそこそこやった。
 だから、成績もトップとはいかないけれど、まずまず上位グループには入っていて、実際、あまり心配はしていなかった。
 ところが、運悪く高校受験には失敗した。
 一番行きたかったところには入れなかった。仲良しの友だちは、みんな合格してその高校に入学したが、佳奈子は一人、私立の女子高に通うことになった。
 もちろん、残念だったが、それほど落胆していたわけでもない。その高校だって行きたかったから受けたわけだし、どこに行っても頑張ろうと思っていた。
 それが、どうしてなのか、自分でもわからないのだが、佳奈子はこの高校に馴染むことができなかった。入学式のときに感じた違和感がずっとぬぐえないまま、一年以上が過ぎた。その違和感は、日に日に大きくなっていく。
 何があるわけでもない。友だちが居ないわけではない。
 でも、ここに居る自分は、本当の自分では無い気がした。
 本音で話している自分とはいえ無い、いつも別の誰かを演じているような、そんな感じがした。だったら、やめればいいのに、そんな自分でしか居られない。
 まず、朝から頭痛が激しくなり、地下鉄に乗る頃になるといつも吐き気がするようになった。本当にトイレへ駆け込んでいつまでももどしていこともある。
 理由がよくわからないけれど、佳奈子は高校へは行きたくないと思った。
 でも、そんなことは許されるはずも無く、何とかその気持ちを抑えながら頑張って毎日をこなしてきた。いつも、一日一日がだだっ広い時間の帯ような気がした。