ユウスケは、自分が投げたケイタイの方をちらっと見た。
 (未来への扉・・だって?)
 ユウスケは苦笑した。
 先のわからない未来なんかに興味はない。大切なのは、確かに見えている今、現実だけだとユウスケはいつも思っていた。
 人の気持ちなんて、いろいろ考えてもそれは憶測に過ぎない。本当の気持ちなんて相手に聞いてみないとわからないのだから。伝えなければわからないのだから。
 (馬鹿馬鹿しい。そんなお子様の遊びには付き合えないよ)

 ユウスケは、ふぅとため息をついた。
 彼女と連絡を取る方法がなくなってしまった今、ユウスケにできることは、これからどうにかして彼女を探すか、黙って彼女からの連絡を待つかのどちらかしかない。
 黙って居なくなってしまった彼女の本当の気持ちを推測するのは難しい。
 もし、知りたければ会って直接話をするしかないだろう。 
 自分の彼女への思いも、伝えなければ伝わらないだろう。
 なぜ一緒に居る時に、それをしなかったのか、それだけが悔やまれた。
 いや、一緒に居る時には気づかないのかもしれない。
 それがあまりにも当たり前すぎて、いつでも話せることだから、話さないまま過ぎてしまったのかもしれない。
 もう、こんなことを何回繰り返し考えたかわからない。何度ひとりで考えても仕方の無いことなのに。