購買の脇の古い木のベンチに腰を下ろした。

中村は、さっき買ってやったジュースをぎゅっと握り締めたまま。


「…大丈夫か?」

「えっ、何が? あ、うん、私は別になんとも…あはは」

…嘘が下手なヤツ。

「ならいいけど」

「うん。あーでもびっくりしたよねー。人のキスシーンなんか見たの初めてだよ。やっぱり静司はさやかのこと好きだったんだねぇ。わかってたけどさ、うん」

何度も笑いながら一気にそう言ってのける。


こんなに中村を動揺させられる静司が羨ましい。

俺じゃあこんな風にはさせられない。


「中村」

「私達いつもお邪魔だったかな? さやかも、そうならそう言ってくれたらよかったのにねー」

「おい」

「明日から放課後早く帰ろっかなー。ね、春樹もそうする? やっぱり邪魔しちゃ悪いしさ…」

「もういいって」

これ以上見てられない、そんなに動揺する姿なんて。


思わず握った手は、驚くほど冷たかった。