* * *

朝、待ち合わせているわけではないけど、大体いつも俺とハルキは一緒に登校する。


「そっか…さやか、音大受ける気ないのか…」

昨日の話をすると、ハルキも顔をくもらせた。


俺とハルキだけが知っている、一年前の出来事―…。


足元の石を蹴飛ばす。

ころころと転がって、塀の辺りでぴたりと止まった。

それを何気なく目で追いながら、ハルキはぽそりと呟いた。

「残念だな。俺、さやかのピアノ好きだったのに」

「…本人に言ってあげなよ。さやか、きっと喜ぶよ」


さやかはハルキが好きだから。

ハルキがそう言ってやれば、もう一度ピアノを弾く気になるかもしれない。

…そう、どんな方法だっていいんだ。

さやかがもう一度あの情熱を取り戻してくれたら。


本当は俺がなんとかしてやりたいけど…。