「きれい」


目を輝かせて赤い夕日に
染まる海を見て
俺は普通の女の子にしか
見えなかった


一瞬だけでも忘れさせて
やりたかった
過去のこと、傷ついたことを。


「海、可愛い」


驚いた


俺も海も 自分からこんな
くさい言葉が出てくるなんて…



「ありがとう」



海が笑った気がした
微笑んだ気がした


やっぱり考えてることは
女の子なんだ
それを出せないだけで


「海、俺…」


好き



その一言が 言えなかった

言いたくなかった


振られたらカッコ悪いし、
俺から言うなんてありえない


無駄な意地、プライドが
たった2文字をかき消した



「ん?」


もしかしたら…
笑うかもしれないけど
今は言えない"すき"



「なんもない」

「?」


不思議そうにこっちを見て
また海に沈んでいく夕日のほうを
切なそうに眺める



「いつか言うから」



いつか

俺が

プライドより

友達より


お前を



大切にしたくなったときに




かならず