「……………。」
「うひょ~~~」


無言の彼女と絶叫する彼氏



見えてるかもしれない


俺には今、真っ青な空が見えてる
地上から100メートル離れた
レールの上から




    ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「じゃあ俺が笑わしてやる」

泣いてる海の涙を拭いてやりながら
俺はそう答えた

嘘じゃなかった
本当に笑顔が見たいと思った
本当に笑わしてやりたいと思った


「ほんと?」

「当たり前だろ」




    ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

って言ったものの…
なかなか笑わないこの人

今まで見てきた女のだいたいは
遊園地に来ると笑う
ジェットコースターをみて笑って
キャラクターみて笑って
ジュースを飲んで笑った


なのに海は
1つも笑わない


「死ぬ」

ジェットコースターを降りて
一言いい放った

「悪い、苦手か?」

「初めて乗った」


そう、こういうやつなんだ
昨日は泣いて可愛かったのに…
女っぽいって思ったのに
今はそんな面影1こも無くて
屋上で見る淡々とした海だった


「可愛くね~」

「ん?」

「なんもない」

「ん」


朝迎えに行ってからずっと
こんなんなんだ
口を開いたと思ったら

"ん"か"うん"か"死ぬ"


「ほんと可愛くねえ」

「知ってる」