夜遅くに帰ってもおばあちゃんはまだ起きていた。
「こんな時間まで遊んで…
おばあちゃん心配しちゃうでしょ…。」

最近、おばあちゃんはよく私に説教をする。
私が叱られるようなことするからだって事は
ちゃんとわかってた。
けど、おばあちゃんの前では、どうしても素直になれなかった。

「うるさいなあ!」
おばあちゃんのことを鬱陶しいと思った。

「もう好きなようにしなさい。」
おばあちゃんの深いため息だけが記憶に残っている。



やがて卒業後の進路を考える時期がやってきた。

実家の農家を継ぐ子
秋田市の大学に進学する子
中には東京の大学に進学する子もいる…

私は、とにかくこの街を出たかった。
何もない田舎が
古い考えのおばあちゃんが
すべてが嫌だった。
東京の暮らしに憧れを持ったのは
自然の流れだったのかもしれない。

とにかく、理由をさがした。

「私、東京の専門学校に行くことにした。
東京で美容師になりたい。」


おばあちゃんの背中が寂しげだった。

それでも、私は行くと決めた。
「おばあちゃん。私行くから。」

「果穂子…」