孫の果穂子と、ここ仙北で二人で暮らしています。
何か特別なものがあるわけではないけれど
毎日がのんびりと平和に過ぎ去っていくようです。
この村にやってきて50年。
金色の稲穂が風に揺れる風景はあの頃から変わらない…

私たちは大切な人を次々と失いました。
娘夫婦は、幼い果穂子を残して
夫は、私を残して

からっぽになった私には、この子しかいない。
果穂子にだって私しかいない。
もうこれ以上、唯一の家族を失いたくない。
私が絶対に守らなくては。
この子には誰よりも幸せになってほしいのです。




「おばあちゃーん♪」
いつもニコニコの笑顔で私に寄り添ってくる。
私にはさびしそうな顔なんて見せない。
果穂子は優しくて強い子です。

だけど、一度だけ…
幼い果穂子が両親と写っている写真を見て

「ねぇ、なんでかほにはパパもママもいないの?なんで?」

胸が痛みました。

「かほちゃんのパパとママはね、一緒には暮らせないんだけど、遠いところでいつも見守ってくれてるの。
だからさびしがらないで。」

「かほ分かんないよ!!何でかほにはパパとママがいないの?まみちゃんにはパパもママもいるじゃん…!かほこ悪い子なの?だから神様がパパとママに会わせてくれないの?」

あの子の前で、初めて涙を流してしまった。
なにも言ってあげられなかった。

それを見ていたあの子はこう言いました。
「ごめんね…おばあちゃん
 かほ、おばあちゃんがいるから大丈夫」

かほちゃん
おばあちゃんでごめんなさいね。