おばあちゃんが亡くなって数週間がたった。
私の意志とは関係なく、月日は確実に過ぎていく。

何もせずにずっとしてちゃだめだ。
そう思った私は、家の大掃除をすることにした。

まず、渡り廊下の雑巾がけ
それからお庭のお手入れをして
おばあちゃんの遺品たちの整理

寝室の、おおきな古い洋服だんす
その引き出しを引いてみる
おばあちゃんの優しい匂いがした。
 
たんすだけじゃない。
居間も、台所も、
この家はおばあちゃんの匂いでいっぱいだ。

でもきっと、ゆっくりと確実に
この匂いは家から消えていってしまう。

そうやっておばあちゃんの生きた証は
だんだんとこの世界から消えてゆく。

人が死んでしまって悲しいのは
もうその人に会えなくなってしまうからだけじゃない。
だんだんと、生きていた記憶が消えてしまうから。

だから私は、ずっと
ぜったいにおばあちゃんのことを忘れない。




その時ふと
たんすの奥に挟まった数枚の紙を見つけた。
私はその紙を広げてみた。